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歯周病とはどのような病気か?

歯周病(歯周疾患)には歯周組織に生じるいろいろな病気が含まれますが、そのほとんどは歯垢(プラーク)中の細菌によってひきおこされる炎症性疾患、すなわち歯肉炎と歯周炎よりなります。歯周炎はムシ歯(う蝕)とならんで歯がなくなる二大原因の一つとしてあげられ、とくに成人期以降では最も重要な位置を占めています。以前は、加齢とともに歯槽膿漏になって一本または一本と歯がなくなり最後は入れ歯になると考えられていましたが、膨大な疫学的調査や基礎、臨床研究の結果、歯肉炎や歯周炎を予防したり治癒させたりすることができるようになってきました。

歯肉炎、歯周炎はプラーク中の細菌からの有害物質によってひきおこされることが明らかにされ、最近では原因菌の同定も進められています。歯肉炎、歯周炎の治療には細菌の除去(プラークコントロール)とともに歯石や歯列不正、不良充填物などおもに歯垢の沈着を促進する局所的な原因の除去と全身的因子の管理が必要となります。ここで重要なことは、歯肉炎、歯周炎の予防や治療には、歯科医院における歯科医や歯科衛生士による処置にもまして、個々の患者さん自身による日頃の管理や治療への協力が大切であるということです。そのためには正常の歯周組織がどのようになっており、病変が生じるとどのように変化するのかを理解しておくことが重要です。

歯と歯周組織の外観

健康な歯肉は光沢のあるピンク色で適度の硬さと弾性を有しています。歯肉の外形は歯の位置や形によって決まり、歯と歯の間の部分(歯間乳頭)では先の尖った楔状となっています。歯肉の大部分(付着歯肉)は歯肉の下にある骨としっかりと結合して指で押してもあまり動きません。歯肉の表面にはところによってスティップリングと呼ばれる小さなくぼみが見られることもあります。歯と歯肉は密接にし、その境目には歯肉溝と呼ばれる浅い溝があるのみで、歯垢や歯石の沈着もほとんど見られません。付着歯肉の幅は個人や部位によって異なります。
歯肉炎になると歯肉は暗赤色となり種々の程度に腫脹することのより、歯と歯肉の境目に深い溝(歯周ポケット)ができます。歯面には歯垢や歯石が付着し、ポケットからはしばしば出血や排膿がみられます。

さらに病変が歯周炎にまで進行すると、より深部に歯周組織が壊され歯と歯肉や骨との結合が失われます。その結果、歯肉が下がりしばしば歯根が露出して、一見歯が伸びたように見えます。歯肉は暗赤色で腫脹したり逆に萎縮したりします。歯と歯肉の境目には組織の破壊による深い溝(歯周ポケット)ができ、排膿や出血がみられます。露出した根面には普通大量の歯垢や歯石が付着しています。歯は動揺し、高度に組織破壊が進行すると歯が脱落することもあります。

歯肉をはがしたときの骨や歯根の状態

健康部では歯冠と歯根の境目近くまで歯槽骨が歯根をしっかりと取り囲んでいます。骨の表面は平坦で、吸収像はありません。歯と歯肉は密接しているので、歯肉剥離表面には歯石や歯垢の付着は見られません。 歯肉炎になった部分では、歯肉をはがすと歯肉ポケット内に種々の量の歯垢や歯石が付着しています。しかし歯肉と歯根の付着はあまり破壊されておらず、骨の変化もほとんどみられません。

一方、歯周炎になった部分の歯肉をはがすと、歯槽骨が吸収され、歯根が種々の程度に露出している様子が明らかに分かります。歯周ポケットに面する歯面には、複雑な歯根の形態に沿って歯根の凹面や根分岐部の裏面にまで大量の歯石や歯垢が付着しています。吸収された骨面は一般に粗くなっていますが、吸収の仕方や程度は個々の歯や根面で異なり、場所によっては水平性に骨が吸収されたり、歯根に沿って垂直性に楔状の骨吸収がみられたりします。骨の吸収状態はレントゲン像とよく対応し、炎症によって骨がなくなった部分はエックス線が透過し黒い影として認められます。

歯と歯周組織の断面

健康部では歯肉が歯周組織表面を構成し、深部組織を保護しています。歯肉は接合上皮といえる未熟な上皮で歯面に付着するとともに結合組織中のコラーゲン繊維によって歯(セメント質)や骨と強固に結合しています。歯は歯槽骨内に歯頚部近くまで埋まり、歯と歯槽骨間には歯周靭帯(歯根膜)とよばれる薄い結合組織が介在しています。歯周靭帯は歯と骨の結合のほか咬合力の緩衝や感覚、栄養、恒常性の維持など大切な機能を担っています。

歯肉炎になった部分では歯肉結合組織に血管の拡張や水腫、炎症細胞浸潤などがおこります。炎症性滲出による歯肉の腫脹や接合上皮の一部が破壊されることによって、歯と歯肉の間に歯肉ポケットが形成されます。ポケットに面する上皮(ポケット上皮)にはびらんや歯肉結合組織内に側方増殖がみられますが、接合組織根尖側端の位置はセメント・エナメル境付近に留まっています。炎症は歯肉に限局し、深部の歯周靭帯や歯槽骨の変化はみられません。

歯周炎になると、炎症にともなう組織破壊が深部に広がり、歯周靭帯の断裂や歯槽骨の吸収像がみられるようになります。接合上皮は根面に沿って深行増殖するとともに、歯垢に近接する部位では歯面から剥離し、深い歯周ポケットを形成します。ポケット内には大量の歯石や歯垢が付着し、ポケット上皮はばらんや潰瘍を示します。ポケットに近い部分では多数の好中球が浸潤し、膿となって排出されます。

しくみ

腫れたり膿んだりするしくみ

歯と歯肉との間の小さな隙間にも細菌がおり、強固にくっついています。その細菌が数を増したり、より強力な菌が入ってきたりすると、身体の免疫機構が働き始め血管が拡がり、中から液体の成分や好中球が出てきます。そのために歯肉は赤く腫れてくるのです。好中球は細菌を食べて殺す働きをもっていますが寿命があり、働いた後やがて死んでしまいます。その残骸が膿みです。

歯ぐき(歯槽骨)が壊されるしくみ

免疫機構にが十分働かないと、細菌の作用によって歯周組織は無抵抗のまま速やかに破壊されてしまいます。免疫機構が正常に働く場合は防御反応としての炎症が起こされ、その結果として細菌の侵襲をある程度防ぐことができます。しかし、この狭い隙間の細菌を駆逐することは容易ではなく、細菌と免疫機構の長い長い戦いが続きます。その結果、戦場となった歯周組織の歯周靭帯(歯根膜)や歯槽骨等の破壊をともなうことになります。