予防歯科と噛む事の重要性

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予防歯科と噛む事の重要性

噛むという行為は、全身の健康とかかわりがあります。

例えば肥満防止。よく噛んで食事をすると、唾液が大量に分泌されます。それにともない、血糖値が上がって空腹感がなくなり、少ない食事量で満足感が得られるのです。
また歯周病などで歯がグラグラして食べ物が良く噛めないと、栄養の偏りから、糖尿病などの病気も悪化します。反対に肥満や糖尿病などの病気のある人は、歯周病が治りづらいことも分かってきました。生活習慣病と歯の病気は悪循環を生むわけです。
さらに、噛むことは脳を刺激することにも通じます。咀嚼は脳からの指令で行われ、噛んだ刺激はまた脳に戻り、脳を活性化します。
普段、咀嚼は無意識に行われていますが、反射的な行為ではなく、学習を通じて覚えた意識行動です。だから赤ちゃんの頃からしっかりと噛むことを教えることが大切です。

唾液はよく噛むことによって多く分泌されます。

そして起きている時の方が寝ている時よりもたくさん分泌されます。口を閉じている時でも出ているのですが、噛む事によって質の良い唾液が10〜12倍も分泌されるのです。それを合わせると唾液分泌量は1日平均で1〜1.5?にもなります。この唾液にはサラサラした唾液と粘液度の高い唾液があります。
この唾液が、食べ物の消化を助けることは、ご存知の通りです。それだけでなく、実に広い作用があります。 例えば抗菌作用。小さな傷ができた時など、なめることがありますよね。これは菌を抑える働きを期待してのこと。傷を化膿させるような菌の発育を抑える物質が、唾液の中に含まれているのです。
歯周病にも唾液は大きな役割を持っています。
唾液の量が減少すると菌が停滞してしまいます。同じ場所に菌が停滞すると繁殖しやすくまた副作用として発生する毒素も増加しやすくなります。これが歯周病を悪化させる毒素なのです。
ムシ歯を悪化させる大きな要素でもあります。なぜなら口の中の環境をムシ歯ができにくいようにする働きもあるからです。
ムシ歯はミュータンス菌などの原因菌が作る酸が、歯の表面を覆うエナメル質の内部から、ミネラルを溶かし出すことができるのです。唾液はこの溶け出しを抑え、ミネラルを戻す働きを持っています。

ムシ歯を子供の病気と考えている人も多いのではないでしょうか。

実は高齢になると唾液の分泌量が減ることや薬剤などの影響で、ムシ歯ができやすい環境になるのです。
現在、国内に多く見られるムシ歯は、表面に穴があいたようなムシ歯ではなく、表面がところどころ白くなった状態です。エナメル質からミネラルが溶け出ている状態を脱灰といいますが、歯の白い部分は脱灰が始まっている状態で、初期ムシ歯と呼ばれます。

脱灰の原因になるムシ歯の原因菌は、実は口の中にいつもいる菌です。

ところが口の中に糖質が入ってくると、それをエネルギーにして数を増やし、酸を出して歯を溶かすのです。
糖質といっても、菌が利用するのは、砂糖に代表される発酵糖質。特に砂糖は、原因菌を菌の表面にくっつける働きもするため、二重の意味でムシ歯を作りやすくします。
もともと唾液には、口の中を中性に近づける作用があります。しかし糖分濃い物が入ってくると、唾液だけでは中性に戻しづらくなります。
一方、ムシ歯の原因菌に利用されない糖質もあります。糖アルコールと呼ばれる非発酵性糖質です。これは同じように甘いものですが、ムシ歯の原因にはなりません。

唾液には、溶けたミネラルを戻す働きがありますが、これを再石灰化と呼びます。

初期ムシ歯は、早期に発見し進行を食い止めると、唾液の働きで再石灰化、つまり治すことができます。ただし再石灰化は脱灰の3倍の時間がかかるため、早期に進行を止めることが大切なのです。

歯周病を予防したり、ムシ歯を再石灰化させたりするためには、しっかりと噛んで唾液を分泌させ、口の中の環境を整えておくことが大事です。
肥満の予防、脳の活性化のために、日頃から食べ物を良く噛み、唾液を十分に分泌させるようにしていきましょう。家族全員が実施するととても有効です。